ツルツルとセンス【なすのツルツル】
大学生の頃、近くに、つげ義春の漫画の名前の居酒屋さんがあった。
演劇だか音楽だかをやってたと噂の、今思うと、私たちよりちょっとだけ年上のお兄さんがやっていたお店。
サブカルっぽくて、少し浮世離れした感じなんだけど、大学生がハメを外したりすると、ピシッと叱ってくれる。
料理はセンスかも…って思ったのはココ。
例えば餃子やワンタンの皮でチーズを巻いたチーズ揚げ。今はどこの居酒屋さんにもあるけど、お兄さんが包んだのは、シガレットみたいに細身でピシッとして。
もう一つ驚いたのはこの料理。
「なすのツルツル」
皮を剥いてマッチ棒くらいに切ったなすに片栗粉をまぶして湯がき、冷やして生姜醤油をかけるだけ。
でも、細く切られたなすの、翡翠みたいな色や、一つ一つ口にした時の、じゅんさいのような繊細な味は、まるで「センス」の塊笑、のようだった。
そのうち店主が変わり、人の良さそうなおばちゃんになると、いかにも学生向けの、お腹にたまりそうなメニューは増えたけど、いつか行かなくなってしまった。
・・・キッカケは、やっぱり「なすのツルツル」。
おばちゃんの「ツルツル」は、小指くらいの太さで、中まで冷えていない。そもそも、火が通るのに時間がかかるから、翡翠の色が褪せている。生っぽいなすの味が強すぎて、生姜醤油では弱い。
・・・良い人そうだったから、言えなかったけど。
あのちょっと厳しめのサブカルお兄さんは、多分プロの料理人ではなかったけれど、この四百円くらいの、品というか、センスの良い味に集中してた。
結局、何度作ってもお兄さんには敵いませんが笑。
上手く作れば、なす半分で2人でバーボンソーダ1杯ずつくらいはイケます笑。
(…と言いつつ今日は冷酒笑。)
ーなすのツルツル(2人分)ー
- なす 2分の1個
- 片栗粉 たっぷり
- 氷水
- しょうが 1かけ
- しょうゆ
- なすは皮をむいてマッチ棒くらいの大きさに切り、水にさらす。
- アクが抜けたらしっかり水気をふき、片栗粉を多めにまぶす。
- 沸騰した湯で、周りの片栗粉に完全に火が通り、なすに青みがさすまで茹でる。
- 氷水にとってしっかり冷やす。
- おろし生姜、しょうゆを添えて出す。
※湯がくのも冷やすのも、意外に時間が掛かるので、どちらも焦らずしっかりと笑。